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「ハマトラ」って何?って言う人のために解説すれば「ハマトラ」とは「ヨコハマ・トラディショナル・カジュアル」の略で、横浜のお嬢様学校フェリス女学院のお嬢様方が作り出したファッションということになる。 清潔感あるカジュアルファッションで、特徴はぺったんこ靴を履くのがお決まりになっている。 アンアンやノンノンという女性週刊誌で取り上げられ全国的大流行となった。 ひところテレビコマーシャルで、リビングで新聞を読むお父さんの前へ娘がハマトラ・ファッションを着て現れ、「ママの衣装ローブで見つけたの」と言う娘の輝く美しさと妻の若い頃の姿を重ねたパパは目を細め「それ、ハマトラっていうんだぞ」、という場面のプレハブメーカーか何かのコマーシャルがあった。 覚えているのはハマトラ時代の人だけかもしれないが。 じゃあフェリス女学院って何?って言う名古屋地区の人に解説すれば、横浜の山の手にある創立明治3年という伝統ある女子学校。 名古屋で言えば淑徳や金城と言うことになるのだろうが、格はずーっずーっと上ということになる。 このハマトラ時代にフェリスに居ただろう昔お嬢様が教えてくれた店がここ「島正」だ。 そしてこのハマトラ嬢がお勧めメニューが島正のオムレツのっけのドテめしだ。 ドテめしなどハマトラのお嬢様が食べるものじゃなかろうが。ドテめしは駅裏の一膳飯屋で日焼けした労働者が掻き込むものだろうがと思っていたから、お嬢様とは不似合い、しっくりこない。 しかもドテとオムレツなど合うか?という疑問も残る。 半信半疑で教えてもらった店の前に立ってみた。 引き戸の上に掛かった紺地に[島正」の屋号を染め抜いた暖簾でほぼ間口一杯という小さな店だ。 しかしやはりいろいろな雑誌に紹介されているのは自慢らしく「サライ」「おとなの週末」「東海・大人のウオーカー」などの雑誌の表紙と紹介記事が店の前に貼ってある。 記事によればこの店は「味噌おでんが絶品」の有名店らしい。 雑誌記事の反対側にはなにやら漢字が沢山並んだ看板がある。 知島正者不如好之者 好島正者不如楽之者 食事の前にこんな難しいパズルを解くのはめんどくさいので、そのまま店に入る。 店内はカウンター席のみで12、3人が限度と言う狭さ。 背中はコート掛けになった壁、カウンターの前は厨房という小さな居酒屋という造り。 厨房には初老の夫婦とその息子らしい若者の三人が立っている。もともと夫婦で始めた店だろうから三人厨房に立つともう身動きができないほどの窮屈さだ。 新客と見てメニューを見せようとする奥さんをさえぎり 「オムレツ」 と注文する。 一瞬たじろいだ夫婦だが、すぐに立ち直り旦那がオムレツ作りに取り掛かる。 狭い厨房で小さなフライパンでオムレツを作る。 店内は昼少し前ということもあり客は5〜6人がカウンター周りに座っている。フェリスのお嬢様が勧めるだけのことはあり、居酒屋風の、お世辞にも綺麗とは言えない店なのに若い女性客が三人居る。 程なくして出てきたオムレツには居酒屋風の店には似つかわしくない小洒落た漆塗り風器に胡瓜の漬物、おからの煮物、ほうれん草のオシタシと三品盛られた箸休めと、お椀にお上品に三分の一ほど注がれたお味噌汁の椀が付いてきた。 メインのドテめしにオムレツ載せは外観上は想定内の様相を呈し、ドテの上にオムレツが載り、オムレツには味噌とおぼしき茶色いソースが掛かっている。 フェリス嬢によれば、このふわふわオムレツを崩しドテと混ぜて食べると「おいし〜い」らしい。 ぼくはこの指導に従わず、とりあえずオムレツだけを食べてみた。 ふわふわのオムレツの味と味噌の強烈な味を予想したが、味噌の味はしない。 いや、少しするかもしれない。オムレツに掛けられた茶色いソースは味噌おでんに使う味噌だれではなく、味噌風味のデミグラスソースだった。いわばデ味噌グラソースだ。 デ味噌グラソースはオムレツの下のドテにも掛けられている。 ただしドテ自体はしっかり赤味噌で煮込んだ味がする。ドテには長めに切った細い万能ねぎも散らしてある。 ここでフェリス嬢の指示に従い、ドテとオムレツを混ぜ混ぜして食べてみた。 「おいし〜い」 たしかに「おいし〜い」 ふわふわオムレツと味噌味が染み込んだドテとデ味噌グラソースが口の中で渾然一体の旨味となり、時々細い万能ねぎのショッキとした食感とほのかなねぎの香りが混ざる。 ドテを噛み締めながら、それにしてもと思う、ハマトラやフェリス女学院とドテとはどう考えてもご縁がなさそうな気がする。 オムレツのっけのドテめし定食は800円 ランチはお値打ちだが夜はやや高い |
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